校長通信
にっこり笑ってあいさつを(1学期終業式)
1学期も本日で終了です。体育館は大変暑かったのですが、生徒達はよく聞いてくれました。ただ、後で生徒に感想を聞くと、イマイチと言われてしまいました。あいさつは、難しいですね。
平成29年度 1学期終業式あいさつ H29.7.20
○ 「おはようございます」
○ 1学期はどうでしたか。
勉強はどうでしたか。1学期の成績優良者(通知表の平均8.0以上)は1年生は36人、2年生は40人、3年生は43人で合計119人でした。頑張りましたね。残念にも、欠点をとってしまった人、2学期以降全力を尽くして頑張るように!
○ また、部活動はどうでしたか。
特に3年生は思う存分出来ましたか。力が発揮できず、悔しい思いをして終わった人も多いと思います。
私は、君たちの試合を、いくつか応援させていただきました。みんな情熱溢れるプレーでした。勝敗はどうあろうと、頑張った皆さんの部活にかけた青春は一生の宝物になると思います。
多くの部活動が3年生が引退し、1,2年生の新チームになっていることと思います。3年生に感謝して、頑張ることが、未来の越谷北高校のためになるのです、どうか、情熱を持って頑張ってください。よろしくお願いします。
○ さて、話はかわりますが、この頃年のせいか、こんな事があります。本屋さんで、おっ、これは良い本だな、読んでみようと購入して、しばらく読んでいると、あれ、なんか読んだことがある感じがするなと思って、家の本棚を見ると、案の定、同じ本があるんです。これはまだ、ましな方で、全部読み終わってから本棚に入れようとして、まったく同じ本があったりします。こんな事では、新しい本を買って読むよりも、今まで読んだ本を読み返してみようと、本棚にある本で、もう一度読んでみたい本を読み返しています。
そんなもう一度読んでいる本で、「もう、不満は言わない」という本の話をします。平成20年に出版された、アメリカのウィル・ボウエンと言う人が書いた本です。
その中で今更ながら、なるほどと感じたことがあります。それは、いろいろな出来事を見方を変えて前向きのエネルギーに変えるということです。
例えば
問題 → 機会
しなければならない → する機会を得た
困難 → 試練
苦しめる人 → 教えてくれる人
不平不満 → 要望
なるほどという感じです。
学校には、地域の方から時々、苦情がきます。これを苦情と捉えるか、チャンスと捉えるかです。例えば、交通マナーが悪いと苦情がきます。あまり良い気持ちはしませんが、これを良い機会と捉えて、先生方が巡回をします。これは、君たちの命を守ることにつながります。また、車が後ろから来ているのに、平気で横に広がっていたり、横断歩道をわたるとき、信号が点滅しているのにゆっくり渡っていたりして、ドライバーの方をいらいらさせたりしていないでしょうか。
実は、先ほど紹介した本の中に、こんな話が紹介されています。
いつも家の前を猛スピードを出して通り過ぎる若い女性が運転する車にその家の主人は、怖い形相で、スピードを落とせと言ったり、手を振りかざしたりしていました。でも、全然その女性はスピードをゆるめません。
ある日、また、その女性の車が猛スピードで来ました。主人が諦めてやり過ごしたところ家の前でブレーキがかかりスピードが落ちたのです。
そばにいた奥さんにどうしてと聞くと、私が笑顔で手を振ったのと答えたということです。
とらえ方、気の持ちようがいかに大切かということです。
誰だって、非難されることを嫌います。非難するとその行動が改善されるどころか、ますますひどくなってしまうこともよくあります。
見方を変え、考え方を変え、言われたことや、されたことを前向きのエネルギーに変え積極的に生きることが自分の人生を豊かにすることでは無いかと思います。
何か、人に言われたとき、知らん顔するのではなく、心を開いて話してみる。あるいは、挨拶でもいいです。道で不満そうに見ているおじさんにこんにちは、と声を掛けてみて下さい。きっと、笑顔になってくれると思います。
挨拶がいかに大切か、朝、校門で登校してくる君たちに挨拶をしていますが、知らん顔の人がいます。しかも、ゆっくりあるきながら知らん顔です。私が門にいるときはもう遅刻ぎりぎりの時です。余裕があるのか尊大なのかは分かりませんが、こっちが挨拶をする前に君たちには挨拶をしてほしいです。出来ればにっこり笑って挨拶してくれれば最高です。1日のスタートをお互い気持ちよく切れますよね。
是非、心掛けて下さい。
○ これから、暑い夏が続きます。勉強(夏期講習)や部活動に一生懸命取り組んで下さい。皆さんが、休み明けに大きく成長して、元気に登校してくることを期待して挨拶と致します。
以上。
7月(文月)の言葉(足るを知る)
足るを知ることがないということは、満たされることがないということ。常に不満が残るので、心穏やかに生きることができなくなってしまいます。満足することを知っている者は、心豊かに生きることができるんだよ、と、老子は説いています。
足るを知る=満足することを知ることは、実は非常に難しいことだと思います。人は、日常の生活の中で、よく他人との比較をしてしまいます。他人の状況を見て、良いなぁとうらやましがったり、時には嫉んでしまうこともあります。しかし、ふと自分を振り返ってみたとき、結構自分は自分で頑張ってきているものなのです。何事も、他人に流されるのではなく、自分自身を顧みて、自分にとっての“足る”を知ることが大切なことなのだと思います。非常にシンプルなことですが、それが、できそうでいてできないことで、実は、本当の意味で幸せになるための鍵なのかもしれません。
「足るを知る」というと、「欲張らずにほどほどのところで満足すれば良いのか~」
と解釈してしまうかもしれません。
しかし、老子の言う「足るを知る」というのは、そのような「仕方なく満足する」という消極的な意味ではありません。「これで良い」のではなく、「これが」良いと思える生き方です。今の自分自身に満足することこそが、「足るを知る」ことなのです。
自分が持っているもの、自分が身につけてきたもの、自分がこれまで得てきたものを認め、受け入れ、まずはそれに満足する。もちろん、上を目指すことも大事なことですし、“欲”もあるからこそ人は努力することができます。
「人に良く見られたい」「人から好かれたい」「尊敬されたい」
そういう気持ちがなければ、頑張れないことだってあります。
しかし、そればかりでは心が疲弊してしまいます。どんなに頑張って何かを得ても、
それに満足することなく「もっと、もっと」と次を望むのでは、自分自身が報われません。
時には、自分の内側に目を向けて、「自分はこんなに多くのものを手に入れてきたんだな」と、今までの自分自身を認めて誉めてあげることも大切です。皆さんも、「足るを知る」ことの価値を知り、「志をもって努力する」価値を知るならば、「今は幸せ」と思いつつ、さらなる幸せを目指して、生き生きと生活できるのではないでしょうか。
(書は、倉澤沙綾先生に書いていただいています。今回は紫の紙に白で力強く書いて頂きました、またひと味違います。)
6月の言葉(水無月の言葉)
2020年度から始まる新しい大学入試「大学入学共通テスト(仮称)」実施の具体案が5月16日文部科学省から出されました。改革の柱は、英検やTOEFLといった民間の検定試験を英語に採用することと、国語と数学での記述式問題の導入です。これまでの「知識偏重」から、思考力、判断力、表現力を問う入試に変えようということと捉えることができます。ただ知識を覚えていれば解けるという問題ではなく、文章や図表、グラフなどを題材にして、そこから情報を編集し文章にまとめる力が必要になるということです。その際、考えた上でどのように表現するかが大切になります。
そこで、今月の言葉を、論語の有名な「学びて思わざれば則ち罔し。思いて学ばざれば則ち殆うし」としました。その意味するところは、「学ぶだけで、自分で考えなければ、物事ははっきりしない。自分で考えるだけで、学ぶことをしなければ、確かなものにならない。」ということです。
一生懸命勉強をして知識を得ても、自分でしっかりと考えなければ、その知識が使えるものにはならない。知識はたくさん身につけたけれども、それがどうしたということになってしまうということです。逆に、いろいろ考えても、勉強しなければ、思い込みだけ激しくて、失敗しかねないと言うことです。つまり、勉強して知識を得ることは最低限必要ですが、さらにその知識を使っていろいろ考え自分の力で表現することが大切なのです。2020年度の入試問題を考えても、知識だけではなく、その知識をベースとして、しっかり自分で考え、表現することが大切なのです。つまり、学ぶことと考えることのバランスが大切で、学んでいるときは、ただ学んでいることに満足していないか常に反省すべきであるし、何か強い思い込みがあるときは、果たして本当に学んでいるのだろうかと反省すべきだろうと思うのです。
(書は、いつも、倉澤沙綾先生に書いていただいています。今回は紙の方に色が吹き付けてありまたひと味違います。)皐月の言葉(千里の行も足下より始まる)
5月になりました。新緑も美しく、過ごしやすい日が訪れました。さて、4月から一ヶ月が過ぎ、何となくぼんやりした気分の人もいるのではないでしょうか。勉強にやる気が出なかったり、何となく憂鬱な気分になったりといわゆる五月病といわれるものです。そこで、気持ちを新たにするために、老子の「千里の行(こう)も足下(そっか)より始まる」を今月の言葉としました。いろいろ思うところはあってもとにかく「まずは始めよう」ということです。どんな長い道も、歩ききろうとする意志のもとで、最初の一歩を歩き始めなければなりません。途中苦しくなるとやめたいなあと思う心がおきますが、一歩一歩、歩き続けることが大切です。そうすることで、必ずや大きな目標にたどり着けるはずです。
田中勉さんという方の小冊子「ひとりごと」の中に、次のような言葉があります。
大河の流れ 一滴から
広大森林 一本から
マラソン完走 一歩から
1日1日の積み重ねで今があります。長い人生です。腐らず、怠らず着実に進んでほしいと思います。
(書は、いつも、倉澤沙綾先生に書いていただいています。今回も趣向を凝らした素晴らしい文字です。)
4月の言葉(夢は大きく志は高く)
新入生を迎える4月になりました。新たな気持ちで取り組んで行こうと思います。年度の初めに生徒達に伝えたいことを卯月(4月)の言葉としました。高校時代は人の生き方を決める大切な時期です。人間というのは、自分で気付いていない、いろいろな才能を持っています。高校時代は、その才能を発見し、生かす努力をすべき時なのです。
4月は、始まりの季節です。その意味では、全ての生徒が、自分の夢を実現するためのスタートラインに立ったと言えます。自分の力を信じて、その才能を磨き上げる日々を実践し、自分の夢を叶えていってほしいと思います。「夢は大きく志は高く」どうか、これからの学校生活において焦らず、怠らず目標に向かって一歩一歩着実に進んで頂きたいと思います。そして、夢を志しに変える力を越谷北高校で身につけて下さい。
(書は、いつも、倉澤沙綾先生に書いていただいています。今回も気合いの入った字体で書いて頂きありがとうございます。夢の文字はなんと金色です。)
禍福は糾える縄のごとし(三月の言葉)
3月になりました。1年間はいろいろなことがありましたが、過ぎてみればあっという間です。今年度も後一ヶ月となりました。相変わらず寒い日が続いていますが、確実に春は近づいています。良いこともあれば悪いこともあるし、悪いことがあれば必ず良いこともあります。そんな思いで、3月の言葉を「禍福は糾える縄のごとし」としました。
天国と地獄の食事についてこんな話があります。
食事内容はどちらも豪勢なものですが、1メートルもある長い箸を使って食べるのです。地獄では、その箸で、何とか自分の口へ食べ物を運ぼうとしますが、長すぎるので前の人や隣の人と箸がぶつかって、うまく食べることができません。喧嘩しながらの食事ですから、美味しいはずはありません。
一方、天国では自分が食べるのではなく、自分の箸で前の人に食べさせてあげます。すると、今度は前の人から自分の口へ食べ物が運ばれてくるのです。和気藹々の楽しい食事です。
世の中はうまくできています。「禍福は糾える縄のごとし」という諺があります。不幸があるから幸福を知ることもでき、悲しみがあるから喜びがあり、他人を思いやり辛抱すれば、他人からも支援や協力を得ることができます。
どのような立場の人でも、この世の中を自分一人で生きていくことはできません。人生に必要なものは、感謝と思いやりです。
3年生は、卒業を迎えます。これから、いろいろな人生が待っていることでしょう。しかし、どんなことに出くわしても、必ずどこかに光はあるものです。今だけを見て、大変だと考えるのではなく、必ず未来は開けると強く念じて下さい。禍福は糾える縄のごとしです。前向きに負の言葉をはかないで進んでいきましょう。
休眠打破(二月の言葉)
2月になりました。3年生は家庭研修に今日から入りました。それぞれの志望大学合格を目指し頑張ってほしいと思います。
いつも3年生がいるのが当然でしたが、いなくなってみて、そのありがたさがわかるということはよくあることです。3年生は1、2年生にとって、目の上のたんこぶという人もいたかも知れませんが、頼りにしていた部分も多々あったと思います。
今一度、3年生に感謝したいと思います。
ところで、寒い日が続いていますが、この寒さが厳しいからこそ、桜の咲く春がうれしく感じるわけです。
「休眠打破」という言葉があります。
春に咲くサクラの花芽(かが)(花のめです)は、前年の夏に作られます。そして、その後、「休眠」という状態になります。休眠した花芽は、一定期間、低温にさらされることで、眠りからさめ、開花の準備を始めます。これを「休眠打破」といいます。休眠打破は、この秋から冬にかけて一定期間、低温にさらされることが重要なポイントです。つまり、寒さにさらされないときれいな桜が咲かないということです。
そして、春をむかえ、気温が上昇するにともなって、花芽は成長「生成」します。気温が高くなるスピードにあわせて、花芽の生成も加速します。生成のピークをむかえると「開花」することになります。
このように、サクラの花芽の「休眠」・「休眠打破」・「生成」・「開花」は、秋から冬にかけての気温と春先の気温に、大きく関係しているということです。
冬のない常夏の国では、日本のサクラは、美しく咲かないそうです。サクラは、四季のある美しい日本の国で進化した植物ということなのです。
私は、なるほどと思うと同時に、人間にも、ある程度の「寒さ」が必要なのかなと思います。それは、試練とか、困難とか、苦労とかにあたるのかなと思います。それを、くぐり抜け、「休眠打破」しないと花は咲かない。この「寒さ」から逃げないで、いかに頑張るかでどんな花が咲くかが決まってくるように思います。3年生に美しい桜が咲くことを祈っています。
1・2年生の諸君は、3年生がいないこの時期、「休眠」という状況かもしれませんが、しっかり4月からの目標に向かって準備をし、努力をしていただきたいと思います。そうすることできっと「休眠打破」し、すばらしい新学年をむかえられると思います。そして、一回りも二回りも大きくなった、新2年生、新3年生になることができると思います。(なお、書は、倉澤沙綾先生に書いていただきました。今回も気合いの入った字体で書いて頂きありがとうございます。)
やり抜く力(1月の言葉)
1月の言葉
「やり抜く力」が大切
「情熱」と「粘り強さ」を忘れないで!
この言葉は、私が、2学期の終業式の式辞の中で話した言葉です。
その時の式辞を掲載します。
「おはようございます」今年も、後りわずかになってきました。昨日は冬至でした。一年で一番夜が長い日でした。冬至の日には、カボチャを食べてゆず湯に入れば、風を引かないと言われています。昨日は、カボチャを食べてゆず湯に入りましたか?
さて、今年もいろいろなことがありました。
いくつかをあげてみました。まず、
・米オバマ大統領が現職の米大統領として初めて広島を訪問しました。
2年生の皆さんは、平和記念資料館で、オバマ大統領が折った折り鶴を見たと思います。
それから、
・英国の欧州連合離脱
・選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初めての、夏の参院選挙
(投票した生徒もいると思います)
・フランス南部のリゾート地ニースでのテロ
・スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」のブーム
・アイドルグループ「SMAP」が2016年12月31日をもって解散
・イタリア中部でM6.2の地震が発生
・オリンピック「リオデジャネイロ大会」
・広島東洋カープがセ・リーグで優勝、25年ぶり7度目
・台風の発生や11月の雪などの異常気象
・オートファジーの研究で、大隅良典・東京工業大学栄誉教授のノーベル医
学生理学賞受賞
等、いろいろありました。
その中でも、オリンピックのリオデジャネイロ大会での、レスリング日本女子の快進撃は、印象的でした。
特に、3階級で金メダルを取った、土性、伊調、登坂の3選手は、試合時間終了間際の逆転で勝っています。その時の新聞は、「このことは決して、奇跡ではない」と報じています。そこには、この選手達を指導したコーチの次のような言葉が載っていました。「大事なことは、終了のブザーが鳴る瞬間まで力を抜かないこと、選手達が、自主的に練習に取り組んできたことが極限状態で生きた。」
どうでしょうか?特に3年生の皆さん、最後の最後まで手を抜かないで頑張ることが、極限状態の時に生きてくるということではないでしょうか。
さて、実は、私は、最近車を買いました。今の車は、コンピュータ制御がすごくて、センターラインを超えた時、前や後ろや側面が障害物に接近したときなど、警報音が鳴ったり、車庫入れも自動でしてくれたりします。
今や、コンピュータ技術はすごいものがあり、人間の仕事をコンピュータが取って代わるとも言われています。つまりAIの発展は目まぐるしく、新井紀子国立情報学研究所社会共有知研究センター長が、2001年に「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)という人工知能開発プロジェクトを立ち上げて、大学の試験にAIを挑戦させることを始めました。
スタート時は、「3年でどこかの大学に、6年目にはGMARCHレベルに合格させる。」という目標を立てたそうです。でも実際には、7割くらいは実現できないと思っていたと言っています。なぜなら、AIは文章の意味を理解出来ないからです。ところが、今年度の進研模試では、国公立・私立併せて756大学のうち535大学に80%以上の確立で合格できるという結果がでたようです。「意味を理解出来ない」という限界を持つAIがなぜ多くの受験生より、上位になってしまったのか。
新井氏は「AIの進歩で失われる仕事は少なくないでしょう。しかし、これまで存在しなかった仕事も生まれてきます。これは産業革命の時もそうでした。今の仕事が無くなったのなら、需要が増えた仕事にうつればいいことです。その時に求められるのが「意味を理解して読む」能力である。」と言っています。行間を読み取ると言うことや、人間特有のいわゆる「あうん」の呼吸もそうだと思います。
私は、これからの世の中は、人間とAIがうまく共存していかなければならないと思います。AIは、暗記や計算が得意です。膨大なデータの集計・分析や検索も瞬時に出来ます。人間が見落としたミスも指摘してくれます。これらにおいては、人間はAIに勝てません。
人間に求められるのは、意味を理解して文を読むことや、考えて判断することであると思います。いろいろな場面で、自分で考えて、判断して、表現する能力というのは、AIには出来ないことだと思います。特に、自分から多くの人たちと関わり合って協力して学んだり、働いたりということは人間にしかできないことと思います。
だから、勉強だけでなく、文化祭や体育祭、修学旅行、球技大会等の学校行事は大切です。学校行事などで意見をぶつけ合いながら折り合いをつける経験を積むことで、人間力を高めていくのです。
人工知能の研究では「フレーム」という言葉が使われます。囲碁やゲームには、絶対的なルールや定められたゴールという枠組み(フレーム)があります。これこそ人工知能が最も得意とする分野です。ところがAIは、フレームを超えた判断をすることが出来ません。つまりとっさの判断をすることが極めて困難であると言うことです。枠組みを超えて判断できるかどうか、AIと人間の大きな違いだと思います。
最初に話した、オリンピックのレスリングの話の中でも、最後の最後まで諦めないで頑張る情熱のようなものは人間しか持ち得ないものではないかと思います。
つい最近、私はグリット(やり抜く力)という本を読みました。人生でなにを成し遂げられるかは、「生まれ持った才能」より「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高いということです。
「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」の2つの要素からなるということです。「情熱」とは、自分の最も重要な目標に対して、興味を持ち続け、ひたむきに取り組むこと。「粘り強さ」とは、困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けることです。才能より、やり抜く力が大切です。頑張って下さい。情熱をもって粘り強くやり抜くことは、AIには出来ないことです。
私は、皆さんが、放課後等に勉強している姿、しかも、教え合っている姿をよく目にします。頑張っている皆さんに頑張ってというのは失礼かもしれません。でも、言います。頑張って下さい。
では、皆さんが、元気で新年を迎えられることを願って話を終わります。
あなたが今まく種はやがて、あなたの未来となって現れる
この言葉は、目先のことだけにとどまらず、 将来のためにたくさん、いろんな種をまいておこう。
種をまかずに花が咲き、実がなることはありえない。いま種をまいておけば、いつどんな花が咲くのか期待も持てる。と言うことだと思います。
そう簡単に諦めるてはダメ、今日の努力は、種まきだと思えば、一粒でも多くまいた方が良いし、種を多くまいた人の方が、何かになり得る可能性は大きいに決まっています。
誰の人生でもない、あなた自身の人生です。あなたの人生を他の誰かに生きてもらうわけには生きません。つべこべ言う前に、実行あるのみです。
種を蒔いても一朝一夕に目が出るわけではないし、目が出たからといって実がなるわけでもない。種を蒔く前には畑を耕す必要もあるし、蒔いた後には水をやったり、雑草を抜いたり、虫や鳥からも守りつつ、収穫のときを待たなければなりません。ただ、種を蒔かずに収穫することは出来ませんから、未来を見据えながら種を蒔いてほしいと思います。
一日一日の地道な積み重ねで今日があり未来が開けてきます。未来を信じ今を精一杯生きましょう。
(なお、書は、倉澤沙綾先生に書いていただきました。月毎に字体を考えて頂きありがとうございます。)
創造のある人生こそ最高の人生である(11月の言葉)
ノーベル賞が年齢制限のない存命の人物へ贈られるのに対し、フィールズ賞はその時点でまさに活躍中の40歳以下の若手数学者に贈賞されているものです。
なぜ、フィールズ賞の話を出したかといいますと、11月の言葉とした「創造のある人生こそ最高の人生である」は、日本人でフィールズ賞を受賞した広中平祐氏が「生きること 学ぶこと」という著書の中で言っている言葉だからです。
広中氏は著書の中で、創造の喜びについて、次のように言っています。「創造の喜びの1つは、自己の中に眠っていた、まったく気づかなかった才能や資質を掘り当てる喜び、つまり新たな自己を発見しひいては自分という人間をより深く理解する喜びではないか」と。ここで、以前に紹介した「未見の我」という言葉が浮かびます。まさしく、創造する喜びは、新たな自分を発見する喜び、未見の我に出会える喜びであるのだと思います。では、創造をする喜びはどうすれば得られるのでしょうか。やはり、それは学ぶことによって得られるのではないか、と私は思います。学ぶことにより単なる知識を得るのではなく、学ぶことによって、目に見えないが生きていく上で非常に大切なものが作られていくと思います。それが、「知恵」といわれるものではないでしょうか。知識が単なる記憶したものということではなく、学びの段階を経ることによって人生を送っていく上での糧になる知恵になるのだと思います。では、知恵を身につけるためにはどうすればよいか、それは、学問をするということにつきると思います。広中氏は「学問は愉しいもの、喜びを味わうものだと語りたい」と言っています。学問をすることにより、知恵が身につき、そして、「ものを創造すること」につながり、創造することの愉しさ、喜びが出てきて、未見の我に出会えることにもなるのだと考えます。創造のある人生を送りたいと思います。