日誌

【SSH】11月16日公開講座(熊谷市大麻生荒川河川敷)

11月16日(日)熊谷市の秩父鉄道大麻生駅~荒川河川敷でフィールドワークの公開講座を実施しました。
今年の公開講座は、テーマ「荒川河川敷の生物相」と(こっそり)銘打ってすべて荒川の河川敷で計画しました。
しかし、天気のめぐりが悪く、5月回(行田市)、10月回(長瀞町)とこれまでの5回中2回も雨天中止になってしまっています。
今回も心配していましたが、結果的には天気よく、寒すぎず暑すぎずで様々な動植物の観察をすることができました。

今回は高校生10名、教員3名、博物館職員1名が参加しました。

 

秩父鉄道大麻生駅から荒川河川敷へ向けて歩きます。


道端の木に花がついていました。
シロダモ(クスノキ科)です。
防虫剤の原料にもなるクスノキの仲間で、クスノキと同じように葉に独特の芳香があります。
葉の裏が白く、白いタブノキ(タモ)からシロダモと呼ばれるようになったそうです。


荒川の河川堤防に沿って歩きます。
堤防といっても、河道側を見ても水は見えません。荒川は広いのです。
この数日前から急激に冷え込みましたが、その影響か、いかにもこのような草原環境にいそうなバッタ類がほとんど見られませんでした。


河川敷のゴルフ場に挟まれた道を通って川に向かいます。
途中の植物も観察します。ここでは、エノキ(アサ科)、トウネズミモチ(モクセイ科)、アカメガシワ(トウダイグサ科)などを観察しました。
アカメガシワの葉には蜜の出る腺点があり、アリが集まることもあります。
なぜ、(わざわざコストをかけて)蜜を出しているのでしょうか?


チュウゴクアミガサハゴロモ(ハゴロモ科)がいました。
蛾の仲間のように見えますが、セミに近い仲間で、中国原産の外来昆虫です。
日本産のアミガサハゴロモによく似ていますが、色味と前翅の端の白い斑紋の形で容易に見分けられます。
今年はこの子が大増殖してあちこちで見られました。
越谷北高校でも廊下の窓などによく張り付いている姿を見かけました。
この昆虫が入ってきたことは、ヒトの生活や在来生態系にどのような影響を与えているのでしょうか。


コセンダングサ(キク科)とコバノセンダングサ(キク科)を見つけました。
いずれも北アメリカ原産の帰化植物です。
花が咲いたあとにできる実の先端にかぎ針のような構造があり、衣服によくくっつくため、「ひっつきむし」といわれる植物のひとつです。


キクタニギク(キク科)が咲いていました。
観賞用に栽培されることもある日本古来の野菊の一つなのですが、道路の法面緑化のためにまかれた中国産のキクタニギクも各地で定着しているそうです。
これは在来、外来、どちらの個体でしょうか。


ツルウメモドキ(ニシキギ科)の実がついていました。
きれいに裂けた黄色い果実から鮮やかな赤い仮種皮に覆われた種子がのぞいて、とてもかわいいです。
クリスマスリースの飾りに使われることもあるそうです。


アカボシゴマダラ(タテハチョウ科)の幼虫を見つけました。
画像で分かりますでしょうか・・・。
ナメクジ型の幼虫が、エノキの枝の分かれ目に張り付いて見事に擬態しています。

アカボシゴマダラは中国原産の美しい蝶です。
90年代に人為的にもちこまれたと言われています。
日本産のアカボシゴマダラ(奄美諸島周辺にのみ生息する固有亜種)との交雑や、同じエノキ食の蝶への影響が心配され特定外来生物に指定されています。

成虫も幼虫も在来のゴマダラチョウによく似ていますが、慣れれば見間違えることはありません。

ゴマダラチョウは秋に生まれた幼虫は3齢幼虫で木(エノキ)から降り、木の根元の葉裏で冬を越します。
冬を越した幼虫は5月頃に動き出して木を登り、エノキの葉を食べて育ちます。

アカボシゴマダラも同じような越冬行動をとるのですが、在来のゴマダラチョウほど季節に厳密ではないようで、けっこう遅い時期でも成虫が産まれることがあります。また、春に動き出すのもゴマダラチョウよりも早く、3月末には活動している幼虫を見つけることがあります。
このような行動の違いは、何を意味しているのでしょうか。


アツバキミガヨラン(キジカクシ科)が見事に咲いていました。
この花は少し変わった特徴を持っており、受粉に共生する蛾(ユッカ蛾)が必要とされています。
アツバキミガヨランは北アメリカ原産の植物であり、ユッカ蛾は日本にいないため種子ができないとされています。
したがって、生えているのは民家の近く(観賞用に植えられたもの)に限られるはずなのですが・・・。
それにしては、野外のまったく意外なところで見かけることがあります。
もしかして種ができることもあるのか?それとも・・・


イラガ(イラガ科)のマユがありました。
イラガの幼虫は毒針毛をもち、刺されると激痛が走るため電気虫などとよばれることもあります。(マユなら毒針の心配はありません。)
イラガのマユには、イラガセイボウ(セイボウ科)という寄生蜂が寄生していることがあります。
寄生されている場合、マユに産卵痕があるためすぐにわかります。

このマユは寄生されていないようでした。


おびただしい数のクコ(ナス科)の実が見られました。
河川敷にとくに多い印象の植物です。
やっと水辺が近づいてきたようです。


開けた場所にでました。河川敷らしいゴロタ石が見られる場所でした。
ここでしばらく生物探しをしました。


秘かに探していたものを見つけたため、参加者の皆さんに見ていただきました。

それは・・・

こちらです。
ちょっと分かりにくいですが、ウスバカマキリ(カマキリ科)の卵鞘です。
残念ですが昨シーズンのものらしく卵は孵化したあとで卵鞘も壊れていましたが、河原の石の下に産み付けられていました。
ウスバカマキリは、全国的に減少しているやや珍しいカマキリです。
埼玉県では、何カ所かで記録されていますが確実な生息地は熊谷市の荒川河川敷のみとされており、埼玉県レッドデータブック2018動物編ではEN(絶滅危惧ⅠB類)にランクされています。
他の大型カマキリ(オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリ、コカマキリなど)がわりとどこにでもいるのに対し、分布が限られるのはなぜなのでしょうか。
もしかしたら、やや特殊な産卵場所(石の下や倒木の下といわれています)が関係しているのかもしれません。


そのまま河原で(といっても水は見えないのですが)昼食休憩としました。


昼食後は、河川敷の環境について改めてふり返りました。
外来植物がとても多く、環境もやや単調です。
本来の(在来の)河川敷の環境はどのようなものだったのでしょうか。


帰路ではスズメウリ(ウリ科)を見つけました。
白いかわいい実をつけています。
カラスウリより小さいのでスズメなのでしょうか。


駅まで戻って閉会行事をしました。

参加者の感想(抜粋)
・これまで目を向けていなかったような環境を見ることができて楽しかった。
・久しぶりの野外観察で楽しかった。1年生のときから参加しているが、知っている生物も復習になったり、新しい知見が得られたりして面白い。
・河川敷にマメ科の外来種が多いように感じた。どれも似ているように思っていたが、実物を見ながら説明を聞くと違いがよくわかったので、自分でも見分けられるようにしたい。
・外来種が多い環境でも希少なカマキリの卵が見られたのが意外に感じた。
・河川敷といっても川が見えないくらいうっそうとしていた。
・昆虫が越冬する形態の違い(卵、幼虫、蛹、成虫)が、生き残るための戦略としてどのような意味を持っているのか気になった。
・在来種の昆虫と近縁な外来昆虫(ゴマダラチョウとアカボシゴマダラ)の越冬行動の違いが面白かった。
・川からの距離で生えている植物に違いがありそうだった。調べてみたい。
・風で運ばれる種子が侵入するうえでは強いのかなと思った。
・近くの大麻生公園(最近、別の調査会で観察した)と近いため似ていると思ったが、けっこう違いがあった。同じ川原でも環境が違うのはなぜなのか。

生態系を観察するときは、その場で見られる生物、環境だけを観察するのではなく、関わりのある周辺の状況について考えを巡らせることが重要です。
河川敷の生態系を理解するためには、その場所だけでなく、上流の環境はどうか、川を作る山の環境はどうなっているか、そのようなことを関連させて考察することで見えてくるものが変わります。
本来、今回観察したような河川中流域ではゴロタ石の河原が広がっているはずです。
参加者が指摘しているように外来種がとても多いのは、河原に土砂が堆積してしまいゴロタ石が埋もれて、植物が生えやすくなってしまっているためと考えられます。
なぜ土砂が堆積してしまっているのかは、上流や山地の環境を知ることで見えてくるかもしれません。
環境を保全するため、環境を取り戻すため、環境を維持するために「自分たちに何ができるのか」を考えてほしいです。

次回の公開講座は3月28日(土)さいたま市田島ヶ原サクラソウ自生地で春の河川敷の動植物、埼玉県の花サクラソウの観察を予定しています。
年が明けて近くなりましたら、申し込みフォームをアップしますので、しばらくお待ちください。