【SSH】3月28日公開講座(さいたま市田島ヶ原周辺)
3月28日(土)さいたま市田島ヶ原でフィールドワークの公開講座を実施しました。
今年の公開講座は「荒川河川敷」をテーマに、中上流域では秩父市武州中川から、深谷市武川、熊谷市大麻生と観察をしてきました。(長瀞町、行田市は雨天のため中止になってしまいました)
今年度最後のフィールドワークは、下流域ということでさいたま市桜区の田島ヶ原周辺で中上流域との違いを見ながら動植物観察をしました。
当初は天候が危ぶまれましたが、未明まで雨が残りましたが気温も上がり絶好のフィールドワーク日和となりました。
今回は高校生15名、卒業生2名、教員1名が参加しました。
さくら草公園に集合し、まずは田島ヶ原サクラソウ自生地を観察します。
田島ヶ原サクラソウ自生地は、数少ない埼玉県の花サクラソウの自生地であり、国の特別天然記念物に指定されています。
保全地はヨシ(イネ科)が生える湿地であり、夏には背丈を超えるほどのヨシ原になっています。
生態系保護のため、毎年1月頃に野焼きをして地上部の枯れたヨシを焼き払い、早春にはヨシより早く葉を展開する様々な湿地の希少な植物を観察することができます。
サクラソウも、そのような希少な植物の一つです。
フィールドの観察では、様々な視点を持つことが大事です。
生物個体を見る、個体群を見る、生物群集を見る、生態系全体を俯瞰するなど・・・。
ミクロな視点とマクロな視点で自然を観察することで見えてくるものが変わってきます。
保護地を広く見ると、黄色い花をつけたノウルシ(トウダイグサ科・環境省NT準絶滅危惧、埼玉県NT準絶滅危惧)が目立ちますが、群落ごとに見ると生え方、花期、葉の色など微妙に違いがあるように見えます。
これは、遺伝的な要因でしょうか。それとも環境変異?
足元に目を移すと(保護地の外です)、カタツムリやナメクジが見られました。
ヤマナメクジ(ナメクジ科)が交尾していました。
ナメクジは雌雄同体で、互いに精子を交換し受精させます。
名前のとおり、山地で見られるナメクジですが、平野部でも森林で見られることがあります。
隣接する秋ヶ瀬公園の雑木林から来たのでしょうか。
枯れ木にはヒダリマキマイマイ(オナジマイマイ科)が二匹ついていました。
殻の巻きが他のカタツムリ(右巻き)と逆のためヒダリマキマイマイと呼ばれます。
朽木の根元にヒメマイマイカブリ(マイマイカブリ関東亜種、オサムシ科)がいました。
越冬していたようです。
保護地の歩道に入り観察をします。
講師から積極的に説明するというよりも、参加者に「分からないこと」を見いだして質問をしてもらうようにしています。
ここで見られた植物を紹介します。
サクラソウ(サクラソウ科、環境省NT準絶滅危惧、埼玉県VU絶滅危惧Ⅱ類)はたくさん咲いていました。
アマナ(ユリ科、埼玉県NT準絶滅危惧)もたくさん見られました。
すでに花が終わり実になっている株もありました。
一部にヒロハノアマナ(ユリ科、環境省VU絶滅危惧Ⅱ類、埼玉県EN絶滅危惧ⅠB類)も咲いていますが、どうも植えられたもののようです。
ジロボウエンゴサク(ケシ科、埼玉県NT準絶滅危惧)もちらほら咲いていました。
ジロボウ(次郎坊)は太郎坊(スミレ)に対して近畿地方で呼ばれていた呼び名に由来するそうです。
シロバナタンポポ(キク科)もちらほら見られました。
外来のセイヨウタンポポは一年中花をつけますが、在来タンポポの多くは春のみ咲きます。
西日本では黄色い花をつけるものよりもシロバナタンポポの方が多いため、タンポポと言えば白い花というイメージの地域もあるそうです。
光沢のある黄色い花を咲かせているのはヒキノカサ(キンポウゲ科、環境省VU絶滅危惧Ⅱ類、埼玉県CR絶滅危惧ⅠA類)でした。
埼玉県内では、田島ヶ原を含む2か所でしか確認されていない希少種です。
ヒロハハナヤスリ(ハナヤスリ科、埼玉県VU絶滅危惧Ⅱ類)は、シダ植物の一種です。
胞子葉を伸ばしはじめているところでした。
夏には枯れ、翌年の野焼き後にまた地下茎から葉を出す多年草のシダです。
春の花としておなじみのスミレも何種類か見られました。
ツボスミレ(スミレ科)
アリアケスミレ(スミレ科)
ピンボケですが、ノジスミレ(スミレ科)
他にも、タチツボスミレなどが見られました。
春はいろいろなところでスミレを探して歩くのも楽しそうです。
保護地を出て、公園のすみの植え込みや草地を観察しました。
足元からも何種類もの植物が見つかります。
もう少し暖かくなってくれば、ゴミムシなどの徘徊性昆虫も見つけられるようになるでしょう。
参加者の一人が、エノキ(アサ科)の枝にアカボシゴマダラ中国産亜種(タテハチョウ科、特定外来生物)の幼虫を見つけました。
冬の間は根元の葉裏で越冬していますが、暖かくなってきてエノキに登って枝の又に落ち着いているようです。
見事な擬態で、よく見ないと見つけることができません。
他の参加者も探して、何頭か見つけ出しました。
安定して生息しているようです。
午後は公園を出て、河川敷を観察することにしました。
水の近くまで移動してきましたが、タチヤナギ(ヤナギ科)などのヤナギ類、スイカズラ(スイカズラ科)、ガガイモ(キョウチクトウ科)など在来種は少なく、外来の植物がとても多いです。
現状として外来種だらけの河川敷の環境に、私たちはどのように向き合うべきなのでしょうか。
水鳥も少しだけ見ることができました。
遠いので、証拠写真程度ですが・・・
カンムリカイツブリ(カイツブリ科、埼玉県VU絶滅危惧Ⅱ類)です。
他に、オオバン(クイナ科、埼玉県NT1準絶滅危惧)、カイツブリ(カイツブリ科)も少し見ることができました。
少し狭いですが、河原で閉会行事をしました。
参加者の感想(抜粋)
・普段では見られないような様々な希少な植物を見ることができて面白かった。いろいろなレベルの多様性を見ることができた。
・久しぶりに参加したが、自然を見る目の感覚を取り戻すことができた。(卒業生)
・生物多様性の3つの階層(生態系多様性、種の多様性、遺伝的多様性)を意識して観察をすることができた。マクロな視点、ミクロな視点といろいろな視点で観察をするのが楽しかった。
・保護されているところでは様々な在来の希少種が見られたが、河川敷では外来種ばかりで、どうしたらいいかを考えなければならないと思った。
・見たことのある植物でも、芽生えだと様子が違っていて見分けるのが難しく、面白かった。
・これまでさくら草公園には来たことはあったが、上ばかり(桜)見ていて足元を見ていなかった。地面に小さな花がたくさん見られて、発見があって面白かった。
・参加者の高校生の様子を見ていると、いろいろなことに興味を持って、自由に観察したり考えを巡らせたりしていて、素晴らしいと思った。(卒業生)
・フィールドに出て観察してみると、生物たちの関わりが立体的であることが実感できて面白い。また、時間の流れを意識して観察すると興味深い発見がある。(教員)
今年度は、荒川河川敷をテーマにフィールドワークを行い、中上流域から下流域まで様々な河川敷の環境を観察しました。
上流に近い秩父市の河川敷ではゴロタ石で希少な生物がたくさん見られましたが、中流、下流と下るにつれて河原を土が覆い、外来種が多くなっていっています。
フィールドワーク講座の目的は、野外での動植物観察から探究課題を見出すことですが、外来種対策はとても大きな課題として、考えさせることの多いテーマになると思います。
これまでのフィールドワークで参加者が気付いている(感想にも書かれています)ように、どんな生物も単独で「そこに在る」ことはなく、様々な生物、生物以外の環境(非生物的環境)と関わりを持ちながら生態系の一部となって存在しています。
外来生物問題や希少種の保全について考えるとき、その生物種についてだけ考えるのではなく、それと関わりをもつ様々な生物、環境に思いを巡らせることはとても重要なことです。
フィールドワーク講座に参加した皆さんが、今後も自分なりに自然と関わる活動を続けていただいて、生態系をめぐる課題の解決に関わってもらえればありがたいです。
今年度のフィールドワーク講座は今回で最後になります。
次年度の予定については、4月以降に越谷北高校HPにて公開する予定になっておりますので、興味を持たれた方はチェックしていただいて、ぜひ参加をご検討ください。