【SSH】6月21日公開講座(行田駅周辺)
令和8年6月21日(日)、行田駅周辺(行田市~熊谷市荒川河川敷)でフィールドワークの公開講座を実施しました。
ずっと雨予報だったので中止もやむなしかと思っていましたが、直前になって朝には雨が上がるという予報になりましたので、実施となりました。
今回は、高校生9名、教員3名の12名が参加しました。
行田駅に集合して、荒川河川敷を目指しました。
駅前には、イヌサフラン(イヌサフラン科)が咲いていました。
ニラやギョウジャニンニクと間違われ、中毒事故が多発している有毒植物です。
毒成分として含まれるコルヒチンは微小管の重合を妨げる作用があり、生物学を学ぶヒトにはおなじみかもしれません。
ヨモギ(キク科)に、アオバネサルハムシ(ハムシ科)がついていました。
朝までわりとしっかり雨が降っていたので、昆虫はあまり活動していないかもと危惧していましたが、杞憂だったようです。
市街地にも、生物を題材にした探究のタネはあります。
アスファルトの境目によく生えている「ねこじゃらし」ですが、エノコログサ(イネ科)、オオエノコロ(イネ科)などが混在していました。
夏にはかなりの高温になるところでも生えているので、耐暑性が高いのでしょう。
いわゆる「ねこじゃらし」は、エノコログサ、オオエノコロ、アキノエノコログサなど複数種が見られますが、耐暑性に差はあるのでしょうか。
荒川の手前に、元荒川が流れています。
ここの最上流は熊谷市内の湧水で、ムサシトミヨ(トゲウオ科)が生息するくらいの水質なのですが、このあたりまで下ってくると排水の流入の影響がかなりあるようです。
辛うじて、ミクリ(ガマ科)や(写っていませんが)マコモ(イネ科)などの抽水植物が見られました。
河川敷に生えているウマノスズクサ(ウマノスズクサ科)に、ホソオチョウ(アゲハチョウ科)の幼虫がついていました。
朝鮮半島が原産と考えられている外来種です。
実は、この場所は2015年に私(中川)が熊谷市でのホソオチョウ初記録として報告をした場所でした。(埼玉昆虫談話会, 『寄せ蛾記』158号, p8, 2015年9月発行)
10年経って、複数の幼虫が見つかってしまいましたので、定着してしまっているということになります。
逆に、10年前は見られた在来のジャコウアゲハ(アゲハチョウ科、幼虫はホソオチョウと同じウマノスズクサを食べる)は一匹も見られませんでした。
タイミング的には、今年第2化の成虫が見られてもよい時期になっているのですが、もしかしたらホソオチョウの定着によって餌を同じくするジャコウアゲハが減少しているのかもしれません。
堤防上の道路は自転車が猛スピードで行きかっているので、注意して観察します。
ヒメイワダレソウ(クマツヅラ科)がありました。
グラウンドカバー(雑草対策として土地を覆う植物)としてよく使われていますが、野外に逸出してしまうと、強力な繁殖力で定着してしまいます。
根絶が難しく、外来種と言ってもよいと思います。
堤防上から河道を眺めます。
荒川本流は遠く、見えません。かなり広大な河川敷です。
ちなみに、行田駅前は行田市なのですが、元荒川を超えると熊谷市久下(くげ)になります。
ここ(河川敷)には、かつて水運、養蚕で栄えた集落(新川村)があったのですが、流通の近代化や、化繊の普及によって養蚕業が下火になると、水害に追われるように村民が去っていき、昭和47年頃に廃村となりました。
60年程前までは人が暮らし、農作業も行われていたのですが、今は住む人はなく通いで農作業をされているようです。
人々が去ったことで、生態系はどのような影響を受けたのでしょうか。今ではどのような生き物が見られるのでしょうか。
フィールドワークを通じて、ヒトの生活と生態系の関係についても考えてみたいですね。
水田(おそらくコムギ)の脇にブタクサ(キク科)が生えていました。
河川敷に広く広がっていたオオブタクサと同属の外来植物です。
ブタクサは明治期に侵入し、昭和初期には定着していたと言われていますので、新川村があったころに侵入、定着していたのかもしれません。
水路わきにツマミタケ(アカカゴタケ科)が見つかりました。
現地では和名が分からず、キツネノエフデ?としていました。
モウソウチク(イネ科)、マダケ(イネ科)の竹林は管理されていないために過密に生えており、檻のようです。
ここでは、地表徘徊性のゴミムシの仲間がたくさん見られました。
参加者が声を上げたと思ったら、キヌガサタケ(スッポンタケ科)でした。
マントの広がりが見事な個体です。
群生するとされるため他個体を探しましたが見つかりませんでした。
ギンツバメ(ツバメガ科)
マドガガンボ(ガガンボ科)なかなかの大きさで参加者も驚きです。
スカシトガリノメイガ(ツトガ科)でしょうか。
ハルシャギク(キク科)です。これも外来植物です。
イヌスギナを見つけました。
水田まわりでよく見つける、スギナ(つくし)の仲間です。
スギナと異なり、胞子葉も緑で葉をもつため、変なツクシがある!と言われることがあります。
水田にはシャジクモ類が見られました。
かつて水田やため池にふつうに見られましたが、農薬使用の普及によって激減しています。
ため池か水路か分かりませんが、水田のわきの水場です。
ここではイチョウウキゴケ(ウキゴケ科)が見られました。
環境省レッドデータ、埼玉県レッドデータともに準絶滅危惧(NT)です。
最後に、元荒川沿いのサクラでクビアカツヤカミキリの調査・駆除採集を行いました。
サクラやウメなどのバラ科樹木を食害する特定外来生物です。
ここで駆除採集した個体は、生物部の研究のための標本となるようです。
短時間で、たくさん駆除することができました。
駅前に戻り閉会行事をしました。
(写真は解散直後のものです。)
参加者の感想(抜粋)
・河川敷と言うことで、地表徘徊性の昆虫がたくさんとれてよかった。
・同じように見える種の見分け方を教わることができたので、実践したい。
・里山で、普段見ている生物と違う生物が見られて面白かった。
・クビアカツヤカミキリの被害が進んでいることを実感した。
・植物から昆虫まで、いろいろな生物について教えてもらうことができた。
・普段は素通りしてしまっているような生物も名前があり、知ることができて良かった。これから自分でも見ていきたい。
・ニュースなどで見ていたクビアカツヤカミキリを実際に見て、本当にいるのかと実感することができた。
・田んぼのまわりなど、普段は素通りしているところに意外と様々な生物がいることが分かったので、これから見ていきたい。
前回は、申込期限が早く1年生は参加していなかったため、今回が実質的には今年度最初のフィールドワーク講座ということになりました。
はじめてのフィールドワークで、教えてもらって見分けられるようになったと思ったかもしれませんが、植物も昆虫も個体差があり、特徴も分かりにくいものもあり、見極める「目」ができていないとわかったつもりでも難しいものです。
今後も、自分で身の回りの動植物を観察するだけでなく、同様の機会を利用して経験を積んでいってほしいものです。
次回の公開講座は、7月19日(日)、さいたま水郷公園を予定しています。
申し込みフォームについては、すぐにアップしますので、興味のある方はご参加ご検討ください。