2017年1月の記事一覧
やり抜く力(1月の言葉)
1月の言葉
「やり抜く力」が大切
「情熱」と「粘り強さ」を忘れないで!
この言葉は、私が、2学期の終業式の式辞の中で話した言葉です。
その時の式辞を掲載します。
「おはようございます」今年も、後りわずかになってきました。昨日は冬至でした。一年で一番夜が長い日でした。冬至の日には、カボチャを食べてゆず湯に入れば、風を引かないと言われています。昨日は、カボチャを食べてゆず湯に入りましたか?
さて、今年もいろいろなことがありました。
いくつかをあげてみました。まず、
・米オバマ大統領が現職の米大統領として初めて広島を訪問しました。
2年生の皆さんは、平和記念資料館で、オバマ大統領が折った折り鶴を見たと思います。
それから、
・英国の欧州連合離脱
・選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初めての、夏の参院選挙
(投票した生徒もいると思います)
・フランス南部のリゾート地ニースでのテロ
・スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」のブーム
・アイドルグループ「SMAP」が2016年12月31日をもって解散
・イタリア中部でM6.2の地震が発生
・オリンピック「リオデジャネイロ大会」
・広島東洋カープがセ・リーグで優勝、25年ぶり7度目
・台風の発生や11月の雪などの異常気象
・オートファジーの研究で、大隅良典・東京工業大学栄誉教授のノーベル医
学生理学賞受賞
等、いろいろありました。
その中でも、オリンピックのリオデジャネイロ大会での、レスリング日本女子の快進撃は、印象的でした。
特に、3階級で金メダルを取った、土性、伊調、登坂の3選手は、試合時間終了間際の逆転で勝っています。その時の新聞は、「このことは決して、奇跡ではない」と報じています。そこには、この選手達を指導したコーチの次のような言葉が載っていました。「大事なことは、終了のブザーが鳴る瞬間まで力を抜かないこと、選手達が、自主的に練習に取り組んできたことが極限状態で生きた。」
どうでしょうか?特に3年生の皆さん、最後の最後まで手を抜かないで頑張ることが、極限状態の時に生きてくるということではないでしょうか。
さて、実は、私は、最近車を買いました。今の車は、コンピュータ制御がすごくて、センターラインを超えた時、前や後ろや側面が障害物に接近したときなど、警報音が鳴ったり、車庫入れも自動でしてくれたりします。
今や、コンピュータ技術はすごいものがあり、人間の仕事をコンピュータが取って代わるとも言われています。つまりAIの発展は目まぐるしく、新井紀子国立情報学研究所社会共有知研究センター長が、2001年に「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)という人工知能開発プロジェクトを立ち上げて、大学の試験にAIを挑戦させることを始めました。
スタート時は、「3年でどこかの大学に、6年目にはGMARCHレベルに合格させる。」という目標を立てたそうです。でも実際には、7割くらいは実現できないと思っていたと言っています。なぜなら、AIは文章の意味を理解出来ないからです。ところが、今年度の進研模試では、国公立・私立併せて756大学のうち535大学に80%以上の確立で合格できるという結果がでたようです。「意味を理解出来ない」という限界を持つAIがなぜ多くの受験生より、上位になってしまったのか。
新井氏は「AIの進歩で失われる仕事は少なくないでしょう。しかし、これまで存在しなかった仕事も生まれてきます。これは産業革命の時もそうでした。今の仕事が無くなったのなら、需要が増えた仕事にうつればいいことです。その時に求められるのが「意味を理解して読む」能力である。」と言っています。行間を読み取ると言うことや、人間特有のいわゆる「あうん」の呼吸もそうだと思います。
私は、これからの世の中は、人間とAIがうまく共存していかなければならないと思います。AIは、暗記や計算が得意です。膨大なデータの集計・分析や検索も瞬時に出来ます。人間が見落としたミスも指摘してくれます。これらにおいては、人間はAIに勝てません。
人間に求められるのは、意味を理解して文を読むことや、考えて判断することであると思います。いろいろな場面で、自分で考えて、判断して、表現する能力というのは、AIには出来ないことだと思います。特に、自分から多くの人たちと関わり合って協力して学んだり、働いたりということは人間にしかできないことと思います。
だから、勉強だけでなく、文化祭や体育祭、修学旅行、球技大会等の学校行事は大切です。学校行事などで意見をぶつけ合いながら折り合いをつける経験を積むことで、人間力を高めていくのです。
人工知能の研究では「フレーム」という言葉が使われます。囲碁やゲームには、絶対的なルールや定められたゴールという枠組み(フレーム)があります。これこそ人工知能が最も得意とする分野です。ところがAIは、フレームを超えた判断をすることが出来ません。つまりとっさの判断をすることが極めて困難であると言うことです。枠組みを超えて判断できるかどうか、AIと人間の大きな違いだと思います。
最初に話した、オリンピックのレスリングの話の中でも、最後の最後まで諦めないで頑張る情熱のようなものは人間しか持ち得ないものではないかと思います。
つい最近、私はグリット(やり抜く力)という本を読みました。人生でなにを成し遂げられるかは、「生まれ持った才能」より「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高いということです。
「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」の2つの要素からなるということです。「情熱」とは、自分の最も重要な目標に対して、興味を持ち続け、ひたむきに取り組むこと。「粘り強さ」とは、困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続けることです。才能より、やり抜く力が大切です。頑張って下さい。情熱をもって粘り強くやり抜くことは、AIには出来ないことです。
私は、皆さんが、放課後等に勉強している姿、しかも、教え合っている姿をよく目にします。頑張っている皆さんに頑張ってというのは失礼かもしれません。でも、言います。頑張って下さい。
では、皆さんが、元気で新年を迎えられることを願って話を終わります。